人為的存在をしか認めたがらない。しかし往々にして、第一の自然的存在の方が強力であって、無意識界の底から、種々の身振や癖や夢想や狂気や罪悪などを強要する。
 なおフロイドは性的本能について微細な研究をなし、リビドーの理論を打立てた。吾々には栄養の本能があって、時に空腹を感ずると同様に、また性的本能があって時に性的空腹を感ずる。この性的空腹をリビドーというのである。そしてリビドーはその実際的満足を得ない場合には、種々の異なった形になって現われてくる。各人の神経組織に随って、或は精神病となり、或は夢となり、或は神秘主義となり、或は芸術となる。
 彼の夢の解釈と芸術の解釈とには、多くの新らしい見解を含んでいる。芸術の解釈には幾多非難の余地があるけれども、夢の解釈は吾々の無意識の世界に多くの光明を投ずるものである。吾々の無意識の世界が、如何に多くの潜在的な記憶や欲望などの要素を含んで、深く広いものであるか、それを明示し、或は暗示する。
 かくて、多くの哲学者や、心理学者などの研究は、吾々の精神生活のうちに広い深い無意識或は潜在意識の世界が存在することを、そして意識の世界はごく狭い一小部分にすぎな
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