り理解したりする実際的役目を帯びてるだけである。吾々の理想や性格は、その意識的な部分よりずっと広く拡がっている。無意識こそ吾々の精神生活の普通の形体であって、この隠れた広い深い源から、吾々の意識的な理論的な生活が流れ出てくる。
 それからなお、彼は時ということについて新らしい考察をした。従来、時は空間と同様に測定されるものとされていた。即ち、時の各瞬間は同質のものであって、一メートルの長さの上に一メートルの長さをつぎたすことが出来るように、或る時間の上に或る時間がつぎたせるものであった。然しそれは、ベルグソンによれば、全く抽象的な仮定に過ぎなくて、現実の時というものは、ただ純粋な持続のみである。持続はたえず変化する。それ故、或る事物や現象の或る瞬間はその前の瞬間とは異なる……。
 右のような所説は、文芸界にも新らしい見解を寄与したが、更に、フロイドの精神分析学は大きな影響を齎した。フロイドによれば、吾々のうちには二つの存在がある。一つは自然的存在、即ち吾々の天性通りの存在であって、も一つは人為的存在、即ち教育や社会的拘束によって作り上げられた存在である、ところで吾々の意識は、この第二の
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