声や足音をよくまねました。そして月のいい晩には、木の上に登って腹皷をうっています。そこへふいに、大きな声で何か云うと、云われた通りになるのです。狸が死んだと叫ぶと、死んだまねをするし、木から落ちたと叫ぶと、本当に落ちてしまうそうです。
 私はみよ子と、よく狸ごっこをして遊びました。
 住宅のすぐ横手に、土蔵が一つありました。旧藩時代には煙硝蔵だったのを、譲り受けて家にもって来たものだとのことでした。その入口の重い扉が開かれているような時、私はみよ子を誘って、その中で狸ごっこをしました。どんな風の日でも、その土蔵の中はしいんとしていて、高い小さな窓からさす明るみが朧ろで、ほんとに狸になったような気がするのでした。
 二階には畳が敷いてあって、いろんな器物の箱が並んでいました。祖母はそこで器物の手入れなんかをしてることが度々ありました。
 梨の白い花が散りかけた頃のことです。祖母が土蔵の二階に上って、いつまでも出て来ませんでした。私は何だか気になりました。というのは、その前日、見知らない男が二人やって来て、大きな鎧櫃一つと、刀を数本と、掛軸を幾つか、車につんで持っていったのでした。家の中が
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