ったものですから、士族のうちの一つである私の家は、親しい交渉を村内には持っていませんでした。そういうことが子供にも影響していました。その上私の家は表が長い坂道になっていましたので、それをわざわざ上ってくる子供もなく、私もそれをわざわざ下りてゆくこともせず、いつも家敷の中で一人遊んでいました。ただ、みよ子だけが時々坂を上ってきてくれました。
みよ子の家は農家でしたが、何かしら一種の家風を具えた富有な家で、その父親は私の父と特別の交渉があるらしく、屡々訪れて来ていました。そして私とみよ子とは、いつから知り合ったともなく、親しくしていました。みよ子には生れて間もない弟が一人ありました。
「僕には、どこかに兄弟が一人いるような気がするよ。」と私はみよ子に云いました。
「あたしもそうよ。」とみよ子は云いました。「あの赤ん坊とは、あたし姉弟《きょうだい》じゃないかも知れない。」
そして私たちは、どこかに同胞があるという秘密をお互に話しあって、手をとりあって籔影に隠れにいくのでした。籔影には、名も知れない小さな雑草に、白い花が咲いていたり、赤い実がなっていたりしました。
「お祖母《ばあ》さんに聞
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