がひかえていました。
あかい服の男の一人が、エキモスにいいました。
「王さまと大臣だ。おじぎをしろ」
エキモスはおじぎをして、顔をあげました。みると、まんなかに、金のかんむりをかぶってむらさきの服をきている人が、王さまらしく、そのすこし前のほうに、ぴかぴかひかる服をつけているのが、大臣らしゅうございました。そのほかの人たちは、赤や金のすじのはいった服をつけて、王さまの左右にならんでいました。
大臣はおごそかな声で、エキモスにたずねました。
「お前は、なんという名前だ」
「エキモスというものです」とエキモスはへいきでこたえました。
「エキモス、お前は魔法つかいだな」
「いいえ、魔法つかいではありません。山の羊かいです」
「その羊かいが、どうして、公園の雀《すずめ》をよびあつめるのか」
「よびあつめるのではありません。雀があつまってくるんです」
「それでは、なんのために、びんぼう人どもの町に、金貨をまきちらすのか」
「みんなをよろこばせたいからです」
「その金貨は、どこからぬすんできたのか」
エキモスはへんじにこまりました。しかたがありませんから、金色の皮袋《かわぶくろ》をとりだし
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