はニコニコしていいました。
「ここではいけませんか」
「ええ、ちょっと……ひみつのことですから……」
 それでエキモスは、その男についていきました。公園のではずれに、馬車がまっていまして、黒い服をきた大きなつよそうな男が四人のっていました。エキモスはいわれるままに、その馬車にのりました。馬車はいっさんにはしりだしました。

      五

 エキモスをのせた馬車は、どこまでもはしっていきました。くろい服をきたつよそうな五人の男が、エキモスをかこんでいました。
 ずいぶんいってから、馬車は大きな石の門をはいりました。そこでエキモスは馬車からおろされました。あかい服をきて剣をさげてる五人の男が、くろい服の男とかわって、エキモスをとりかこみました。
 エキモスにはわけがわかりませんでした。でもべつにこわいともおもいませんでした。あかい服の男たちにつれられて、大きなたてもののなかにはいり、ながいひろい廊下をとおって、ちいさな中庭にでました。そしてそこで、じゃりのうえの木の腰掛《こしかけ》にすわらせられました。
 やがて、正面の幕がまきあがりました。中庭より一だんたかい部屋のなかに、大ぜいの人
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