ると、幾つもの池に種々な金魚が一杯はいっていた。彼は竜金の池に目をつけた。尾が大きく色がよくて、それが一番立派そうだった。お上さんを呼んで、「四五匹下さい、」と云った。
多くの群の中から、望みのものを選り出さなければならなかった。これと目星をつけて、白い鉢の中に掬い上げて買うと、それより他のものの方が立派なように思われた。他のを掬い上げて貰うと、更に立派なものが出てきた。彼は何度も選定を変えた。
「此処に居るのでお気に召さなければ、」とお上さんは云った、「上等のを二三日のうちに取り寄せてあげましょう。これでも上等の部ですが、お望みではどんなのでもありますから。」
彼はすっかりまごついてしまった。「これでよござんす、」と答えながらも、自分の選んだのが一番悪いもののような気がしてきた。尾が歪んでいたり、赤の工合が面白くなかったりした。彼は苛々してきた。そしてなお二三度選み直した後に、それで諦めた。
容器の問題になって、彼は更に困った。硝子の容器なら、そしてその家に在る一番大きな容器でも、二匹が精一杯だそうだった。彼は折角選んだ五匹の中から、更に二匹を選まなければならなかった。
硝子
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