が変な眼付でじろじろ見るので、彼は一寸心を曇らした。
「今日は一日愉快に暮すんだ、御馳走でも食べよう。」と彼は考えた。
 友人を誘い出すのも億劫だったので、其処に在る一軒の洋食屋に飛び込んだ。二階には誰も他に客がなかった。
 彼は窓際の椅子にゆったりと腰をかけて、街路の騒音に耳を傾けた。電車の響きがした。人の足音がした。それらを水の中ででも聞くような心地がした。室の中は静まり返って、白い天井と白い壁とで余りに明るかった。長くまたされた後に、皿が漸く運ばれてきた。腹がいい加減にふくらんでくると、ふと思い出して、中途から麦酒を一本取った。
 食事がすむと、妙にぼんやりしてしまった。「暫く此処に居てもいいだろう、」と彼は云った。「はあどうぞ、」と給仕は慌てたように答えながら、片方の眉尻を下げ口を少し歪めて、変な顔をした。彼は可笑しくなった。笑を押えて眼を円くしながら、彼はも一脚の椅子の上に足を投げ出した。見ると、向うの卓子の上の大きな硝子鉢に、金魚が四五匹はいっていた。馬鹿に大きな鰭と尾とを動かして悠長に泳いでいた。彼は立ち上って覗きに行った。上から覗き込むと、小さな嫌な金魚だった。横から硝
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