なったら負けやしないよ。どんな高い木にだって登れるんだ」
「だけど、この犬みたいに水泳《みずおよ》ぎはできないだろう」
「できるとも。水も泳げるし、地にももぐれるし、空も飛べるし、何でもできるよ」
言ってしまってから、太郎は、とんだことを言ったと、後悔《こうかい》しました。が、もう取り返しがつきませんでした。相手の子供は突っ込んできました。
「うそばかり言ってらあ。それじゃ、泳がしてごらん。海を泳がしてごらん」
太郎はしばらく考えてから、答えました。
「泳がしてもいいが、濡れて風邪でもひくといけないから……そうだ、水にはいっても、毛のぬれないような薬を、持っておいでよ、そしたら、すぐに泳がしてみせましょう」
相手の子供は困った顔をしました。そして、言いました。
「そんなら、地にもぐらしてごらん」
「いいとも。だけど、地面の中じゃあ、道に迷うといけないから……そうだ、地の中に、いっぱいローソクをつけてくれよ」
相手の子供は困った顔を[#「困った顔を」は底本では「困って顔を」]しました。そして言いました。
「そんなら、空を飛ばしてごらん」
「いいとも。だけど、鳥じゃないから、やたら
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