た。
「大根でも芋《いも》でも人参《にんじん》でも、食べるよ」
するとその人は、大根と芋と人参を、たくさん置いて行きました。
海で地引網《じびきあみ》をやりますと、いろんな魚がたくさん、ぴちぴち跳ねながら、引き上げられました。
「まてまて……」
と、漁師のひとりが言いました。
「太郎さんの白猫に、御馳走してやろう」
そして大きな鯛《たい》や平目《ひらめ》を、持って来てくれました。
魚や果物や、野菜が、たくさんたまりますので、太郎もおじいさんも困りました。しまいには、それを近所の貧乏な人達に分けてやりました。
けれどもまた、その美しい白猫を、うらやみねたむ者もありました。
太郎がチロといっしょに野原で遊んでいると、そっと、大きな犬をつれてきて、けしかけておどかす子供がありました。チロはびっくりして、太郎の肩に飛び乗って、せな[#「せな」に傍点]をまるくして怒っています。太郎はそのチロを胸に抱いて、相手をにらみつけてやりました。
「きみんとこのチロ、弱虫だね」
「何言ってるんだい。りこうだから、やたらに喧嘩《けんか》しないんだ」
と、太郎は言い返してやりました。
「いざと
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