さな猫は、太郎の腕を枕にして、すやすや眠ってるのでした。
珍しい大雪がとけると、暖い天気が続いて、にわかに春めいてきました。木の芽が出かかり、草の葉が萌えだし、海は平に凪《な》いでいます。
太郎はチロをつれだして、野原や海岸で遊びました。通りがかりの人達は、まっ白な美しいチロを、立ち止まって眺めました。
りんごやなしを籠《かご》にかついでる人が、通りかかりました。
「まあ、きれいな猫ですね。どんなものを食べてるんですか」
「なんでも食べるよ」
と、太郎は答えました。
「りんごでもなしでも、食べるよ」
「では、これも、食べさしてください」
そしてりんごとなしを、いくつも太郎にくれました。
みかんをかついでる人が、通りかかりました。
「まあ、きれいな猫ですね。どんなものを食べてるんですか」
「なんでも食べるよ」と、太郎は答えました。
「みかんでも、食べるよ」
するとその人は、みかんをいくつも置いて行きました。
大根や芋《いも》や人参《にんじん》をかついでる人が、通りかかりました。
「まあ、きれいな猫ですね。どんなものを食べてるんですか」
「何でも食べるよ」と、太郎は答えまし
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