いませんか。手品や奇術にかけては、世界一の名人ですよ」
匪賊たちはしばらく、互いに何か相談しあいました。
「よろしい。それでは、おれたちのところへ来い。おれたちはな、金銀廟《きんぎんびょう》の玄王《げんおう》の手下の者だ。安心してついて来るがいい」
キシさんはもとより、太郎もチヨ子も、内心はっとしました。金銀廟の玄王……チヨ子の父、李伯将軍《りはくしょうぐん》キシさんの主人……その玄王をたずねて、苦しい長い旅をしてるのです。けれど、玄王は、匪賊にうち負けて、行くえがわからなくなっているとのことですし、今こやつたちは玄王《げんおう》の手下だと言っていますし、どうも不思議でなりません。
キシさんは、太郎とチヨ子にめくばせしました。そして匪賊《ひぞく》たちに答えました。
「金銀廟《きんぎんびょう》の玄王……噂《うわさ》に聞いたことがあるようです。それでは、そこへ案内してください」
匪賊が案内してくれるので、道に迷う心配はありませんでした。そのかわり、山坂になってる野原を駆け続けるので、つらい旅でした。そして二日目の夕方、金銀廟の城につきました。
キシさんとチヨ子にとっては、なつかし
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