中にはいっていくと、なんだか、馬車の屋根がきいきい鳴るようです。始めは気にもしませんでしたが、何度もそれらしい音がきこえるので、少年は気味悪くなりました。馬車の屋根がきいきい鳴りますよ、と少年はメーソフさんに注意しました。メーソフさんは黙っていました。少年はまた注意してやりました。すると、メーソフさんはひどく怒りました。
「そんなばかなことがあるものか。とんでもないことをいう奴だ。けちをつけやがって……今晩はめしを食わしてやらないぞ。出ていけ!」
そして少年は、御飯も食べさしてもらえず、外に追い出されたのでした。
「その馬車を買いましょうよ。ちょうどいいや」
と、太郎はキシさんにささやきました。
「うむ、よかろう」
と、キシさんは答えました。
そこで、ふたりは少年に案内さして、メーソフの古物店《こぶつてん》に行きました。
大きな店でした。仏像《ぶつぞう》や、陶器類《とうきるい》や、いろんな骨董品《こっとうひん》などが、いっぱい並んでいて、その奥のほうに、年とったがんじょうな男がひかえていました。顔じゅうまっ黒い髭《ひげ》をはやして、目がきらきら光っています。それがメーソフでした
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