す、熊《くま》がいます……。
「わかったでしょう。それは、地図ですよ。さて、その金銀廟《きんぎんびょう》というのは……」
 老人は他の紙一枚よりだして、その始めの方を指しました。そこを眼鏡でのぞいてみると……白い塔が立っていて、その上に、小さな白猫が寝ています。よく見ると、太郎のチロとそっくりで、いまにも起きあがって駆け出しそうです。
 太郎は驚いてしまいました[#「驚いてしまいました」は底本では「驚いてしましいました」]。ちょうど、窓から夕日が差して、部屋の中がまっ赤になり、まるでおとぎばなしの国にいるような気もちでした。
「一郎がお世話になったお礼に、その地図をあげましょう」
 と、老人は言いました。
「金銀廟まで行くには大変だから、李伯将軍《りはくしょうぐん》でも道に迷うかもしれません。だから、その地図を見ながら行くといいんです。それは不思議なインキで書いたもので、その眼鏡でなければ見えません。けれど、人に見せてはいけませんよ。地図など持ってるところを見つかると、探偵《たんてい》とまちがわれて、ひどい目にあうことがありますよ」
 太郎はうれしくてたまりませんでした。もう、すぐにも
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