ました。玄王《げんおう》の娘のチヨ子のこと、李伯将軍《りはくしょうぐん》のこと、金銀廟《きんぎんびょう》のことなどすっかり打ちあけました。そして、そうしながら、持ってきた御馳走《ごちそう》を三人で食べました。
老人はいちいちうなずいて、おもしろそうに一郎や太郎の話を聞きとりました。
「私も手品《てじな》使いをしてほうぼう歩いたことがあるから、満州《まんしゅう》や蒙古《もうこ》のことはよく知っていますよ。金銀廟のことも、行ったことはないが、話には聞いています。あんたが金銀廟を訪ねて行きなさるなら、よいものを見せてあげましょう」
老人は、押し入れの中に頭をつっこんでしばらく何かさがしましたが、やがて何枚もの白い紙と、柄《え》のついた大きな眼鏡《めがね》を、取り出しました。
「さあ、その紙を、その眼鏡でのぞいてごらんなさい」
太郎は不思議に思いながら、その白い紙をひろげて、眼鏡でのぞいてみますと……びっくりしました。ただの白い紙のようですが、その上に、ありありと、いろいろなものが浮かび出てきました。山があります、川があります、道があります、家があります、大きな塔があります、馬車がありま
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