いますがまさしく、キシさんです。毎日一緒に暮らしてる、あの李伯将軍《りはくしょうぐん》のキシさんです。
キシさんは、つかつかと歩み寄ってきました。
「あすまで、その道具あずかる」
そして小さな声で、太郎にささやきました。
「秘密《ひみつ》、秘密……。あとで話す」
それから、また大きな声で言いました。
「明日、ここで、すばらしい手品《てじな》なさい。それまで、この道具、私あずかる。かわりに、私お金あずける」
そしてもうキシさんは、片手に銀貨をいっぱい握って、それを差し出していました。
太郎は困りました。まさか手品の道具をあずかろうという人があろうとは思いませんでしたし、しかもキシさんが出てこようとは思いもかけなかったのです。けれども、キシさんなら、自分が持ってるのと同じことだし、「秘密、秘密」と言われたのは、何かわけがあるに違いありません。それで太郎は、わざと知らん顔をしていました。
「それでは、道具のかわりに、そのお金をあずかっておきます 明日[#「おきます 明日」はママ]、ここに来てください。そしたら、すばらしい手品をして見せましょう」
キシさんはお金を渡すと、金輪《かな
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