くの広場におおぜい人だかりがしているので、行ってみました。
広場のまん中にござ[#「ござ」に傍点]をしいて、三角の帽子をかぶり、汚い服をつけた少年が手品《てじな》をつかって見せていました。
「おや、あれは……」
太郎はつぶやいて、なおよく見ますと、確かに船の中で知りあった少年です。
「だいぶ練習したらしいな。うまくなってるよ」
太郎はひとりごとを言って、人の後から見ていました。
少年は、いつかの輪投げの芸を見せていました。今日は、五色にぬった輪を五つ持ち出して、高く宙に投げあげては受けとめ、両手でくるくる使い分けをして見せました。それがすむと、長い竹の先で、皿まわしをして見せました。次には一枚の銀貨を、からだのあちこちに隠したり、あちこちから出したりして見せました。その合間には、しゃちほこ立ちをしたり、とんぼ返りをしたりしました。
だけど、群衆はただぼんやり見てるきりで、喝采《かっさい》する者もなく、お金を放ってやる者もあまりありませんでした。少年は悲しそうでした。
次に少年は、ひと抱えほどある大きな毬《まり》を取り出し、玉乗りの芸を始めました。
毬の上に乗って、足でそれ
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