。ぼくも行ってやるよ。みんなで蒙古に行こう」
キシさんとチヨ子とは、目を輝やかして、太郎の手を握りしめました。
手品使《てじなつか》いの少年
太郎は、チロといっしょに、蒙古《もうこ》まで行ってみようとほんとに決心しました。
そのことを聞くと、松本さん夫婦は、心配しました。けれど、太郎のおじいさんはかえって太郎の勇気をほめ、立派なことをしてくるようにと元気づけ、なお薬を一缶《ひとかん》くれました。神主をしているおじいさんの家に、昔から伝わってる薬で、どんな病気にも、きずにも、疲れにもきく薬だそうです。
松本さん夫婦、チヨ子とキシさん、太郎とチロ、それだけの人数でした。太郎は立派な服を作ってもらいました。
門司《もじ》に行き、それから船で、大連《だいれん》へ行くのです。
船は正午《しょうご》に門司を出ました。風のない春の日で、海はおだやかでした。船はすべるように進みました。青い山々がしだいに遠ざかるのを見送って、太郎はちょっとさびしくなりましたが、蒙古のこと、玄王《げんおう》のこと、金銀廟《きんぎんびょう》のことなど、いろいろ想像しますと、身うちに元気が満ち満ち
前へ
次へ
全74ページ中26ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング