わかりません。がとにかく、そういう知らせが、九州の北海岸の別荘に来ていた日本の貿易商のところに、長くたってからとどきました。そして東京から、玄王のむすめと李伯将軍とは呼びむかえられました。けれど、玄王はどうなったかさっぱりわかりませんし、匪賊がばっこしているという蒙古へ帰られるかどうかも、わかりませんでした。
 その玄王のむすめというのが、チヨ子で、李伯将軍というのが、キシさんで、大連の貿易商は、この家の主人の松本さんです。
「そして、金銀廟《きんぎんびょう》の猫というのは?」
と、太郎はたずねました。
「おう、金銀廟の猫!」
と、キシさんは叫びました。
 玄王の城の中に、金銀廟という宮《みや》がありまして、白い塔が建っていて、そこには、金目銀目《きんめぎんめ》の猫がまつって[#「まつって」は底本では「まって」]あるのです。それが、城の護《まも》り神です。何か願いごとがある時には、その猫に祈ればきっとかなうと、言い伝えてあります。
「私、その猫に、一心《いっしん》に祈った。そして、金目銀目《きんめぎんめ》の猫、見つかった。それで、私、なお祈った。無事に蒙古《もうこ》へ帰られるかどうか、
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