に光ってる世界です。誰も通る人もなく、犬の姿も見えず、小鳥の声も聞こえず、ただまっ白で、静かです。太郎は飛ぶようにすすんでいきました。
 街道からそれて、せまい坂道をしばらくのぼり、向こうの小高い丘の上、そこにおばあさんの墓がありました。
 太郎は墓の前の雪を払いのけ、青柴《あおしば》の枝を折ってきて供《そな》え、そして祈りました。
「おばあさん、もう五十日たちました。安らかに眠ってください。おばあさんがいなくて、ぼくはさびしいけれど……けれど……しっかり生きていきましょう」
 何度もおじぎして、そして帰りかけました。
 手足が冷たくかじかんで、身体《からだ》がこわばってくるようでした。でも、元気を出して、息をふうふうはきながら、雪を蹴散らして歩きました。
 墓地を出て、丘を下りかけ、大きな杉の木が一本立ってる曲り角まで来ましたときに、ばったり前に倒れました。
 太郎は自分でもびっくりして、頭をあげて見まわしました。そして、膝がしらで起き上がろうとすると……なおびっくりしたことには、杉の木の根元に、吹き寄せられて積もってる雪が、ひとかたまり、むくむくと動き出しました。おや……と思って、
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