したが、楽しく、暮らしておりました。
ところが、冬の寒い日、おばあさんは病気になって、亡くなりました。
悲しみのうちに、お弔《とむら》いもすみました。
それから毎日、五十日のあいだ、太郎は、おばあさんの墓におまいりしました。雨が降っても雪が降っても、欠かしませんでした。
五十日目の日は、珍しい大雪でした。二、三日前から降り続いていたのが、夜になって急にひどくなり、朝起きてみると、野も山も見渡す限り、一面にまっ白でした。
「あの通りの大雪だから今日は止めたらどうだい」と、おじいさんは言いました。
「いいえ、今日でお終《しま》いだから、行ってきます。だいじょうぶです」と、太郎は答えました。
足には、ももひきの上に、きゃはん[#「きゃはん」に傍点]をつけ、たび[#「たび」に傍点]を何枚もかさね、ぞうりをはき、手に毛糸の手袋をはめ、大きな頭には、おじいさんの大きな大黒帽《だいこくぼう》をかぶり、そして古いマントにくるまって、まるで人形のようにまんまるくなって、太郎は出かけました。
雪はもう降り止んで、うすく日の光が差していました。どちらを見ても、どこを見ても、まばゆいほど、まっ白
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