よく見ると、そのまん中に、金色と銀色との二つの玉が、ぴかりと光っています。……それが、猫でした。
 太郎は夢中に立ち上って、猫を抱きとりました。――一本の混じり毛もない、全身まっ白な小さな猫で、片方の目が金色で、片方の目が銀色で、長い尻尾《しっぽ》の毛がふさふさとして、白狐《しろぎつね》のようです。
 猫は太郎の胸にしがみついて、ニャーオ……と鳴《な》きました。
「おう、よしよし……寒いの……」
 太郎は猫をマントの中に入れてやり、上からしっかり抱きかかえて、うれしくてしようがありませんでした。もう寒さも疲れも感じませんでした。一散《いっさん》に家へ飛んでいきました。
「おじいさんおじいさん……猫がいたよ……あの大きな杉の木のところに……とてもきれいな猫ですよ」
 おじいさんは、こたつから出てきました。
「ほう、なるほど、これは珍しい、きれいな猫だ」
 太郎はマントも大黒帽《だいこくぼう》も手袋もたび[#「たび」に傍点]も、そこに放りだして、上がってきました。
「おじいさんの髭《ひげ》より、もっとまっ白でしょう 雪より[#「でしょう 雪より」はママ]白かったんだもの……」
 おじいさん
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