の目……銀の目……ね、よくできた」
 そして彼は、さも大事らしく、声をひそめて言いました。
「あなたとチロのおかげで、お嬢さん元気になった。私うれしい。これから、だんだん、願いごとかなう」
「願いごとって、なあに?」
と、太郎はたずねました。
「それ、大事なこと……まあ、見ていてください。この猫、生かしてみせます」
 そして彼は、赤土の大きな猫の前に屈んで、両手を胸に握り合わして、何か口の中で唱えました。しばらくすると、急に立ち上がって、両手を頭の上にさし上げ、それからまた屈んで、頭を垂れ、両手を組み、そんなことを何度もくり返し、そしてじっと猫の方を見つめました。
「それ、生きた、動いた。ね、動いた」
 太郎は、ばかばかしくなりました。赤土の猫が生きて動く……そんなばかなことがあるものですか。
「動きなんかしないよ」と、太郎は言いました。
「よろしい。今度は動く」
 キシさんはまた、前のようなことをくり返しました。禿《は》げた頭が赤く、顔も赤くなって、一生懸命にやっています。もう、うす暗くなりかけていて、松林の中はしーんとしています。じっと見ていると、赤土の猫が……じりじり、前のほうに
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