前で、男の方はキシさん、少女のほうはチヨ子と、言われていました。
そのうちにお話してあげます、と、奥さんはそう言うきりで、意味ありげに、微笑《ほほえ》むのでした。
二人とも、あまり外に出ませんでした。それを、太郎はよく誘い出しました。
広い松林《まつばやし》が、庭にとりこんでありまして、そこで気持ちよく遊べました。チロも一緒に遊びました。三人ともチロを大変かわいがりました。
それにまた、太郎はキシさんから、馬に乗ることを教わりました。厩《うまや》に馬が二|頭《とう》いまして、キシさんはその一頭を引き出しては、いろんなことを教えてくれました。何でも知っていました。えらい人のようでした。
ところが、ある日の夕方、松の梢《こずえ》に小鳥の巣を探しながら太郎が歩きまわっていますと、向こうの、椿《つばき》の茂みの陰から、彼を呼ぶものがあります。行ってみると、キシさんでした。
「太郎さん、これ、よくできた、ね」
どこから取ってきたのか、ねばねばした赤土で、大きな猫をこしらえてるのでした。手を泥だらけにして、にこにこ笑っていました。金貨と銀貨とが一枚ずつ、両方の目に入れてあります。
「金
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