玉は、テーブルから落ちてころがり、チロも跳《と》び下《お》りてその玉にじゃれ始めました。
男はひどくうれしがって、ほかのガラス玉やゴム毬などを、いくつも転がしました。
チロはあっちこっち駆けまわっています。
女の子は、やはりじっと座ったまま、チロを見ていました。その長椅子の前に、毛皮のついた小さなスリッパがぬぎ捨ててありました。それに、チロがとびついてじゃれかかりました。
「こら、お嬢さんのスリッパを、なんだ」
男はそう叫んで、追っかけました。チロは逃げました。男はなお、追っかけました。四つばいになって、テーブルの下をくぐったり、椅子《いす》の下に頭をつっ込んだりしましたが、チロのほうがすばしこくて、つかまりません。男はいきりたってきて、ぱっととびつこうとしますと、それがちょうど、小さなテーブルの下で、つまずいて転び、テーブルはひっくりかえり、上にのってた花瓶《かびん》が、大きな音をたててこわれました。
とび起きた男は、ものすごい顔をしていました。チロはもうスリッパも打ち捨てて、部屋のすみっこにちぢこまっていましたが、男はその方をにらみつけて、獣《けもの》がほえるような声をた
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