した。
「チロと一緒なら、行ってもいいけれど……なんでも、好きなことをしていいの?」
女の人の目が、ぱっと大きく光りました。
「ええ、よろしいですとも、なんでも、好きなようにしてください。では、来てくださいますね、チロちゃんと一緒に……ね、来てくださいね」
金銀廟《きんぎんびょう》の話
太郎とチロが行った家は、さほど遠くではありませんでした。
海岸に沿った広い道を、自動車は飛ぶように走ります。岬《みさき》を二つまわって、その向こうの町のはずれ、小高い山のふもとに、二階建ての家がありました。
大きな家で日本室や洋室が、いくつもありました。主人の松本さん夫婦のほかに、下女《げじょ》や下男《げなん》や馬……そして、一番奥の洋室に、変なふたり……。
ほんとに、変な人達でした。太郎はそこに連れて行かれた時、びっくりしました。
かたすみに、立派な長|椅子《いす》の上に、十歳《とお》ばかりの女の子が座っていました。肩のあたりまでの長さの髪を、宝石のついた、留金でとめ、空色の洋服をつけ、白い絹の靴下をはいていましたが、全体が、ほっそりしていて、口もあまりきかず、からだもあま
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