。時をはかって、チロをさっと放してやると、チロは俵《たわら》の上に飛び上がりますが、雀の方が早く、ぱっと逃げたあとです。
遊び疲れると、太郎とチロは、俵の上に寝そべって、うとうととしました。それから、また雀の声に目を覚しては、いろんなことをして遊びました。
「太郎や、太郎や……」
呼ばれて、気がついてみると、おじいさんが、向こうから手招きをしていました。
太郎はチロを抱いて、家に戻って行きました。すると……せんだって、チロをねだったあの女の人が、今日は、しとやかな和服《わふく》姿で、おじいさんの前に座っています。
おじいさんは話してきかせました。
「この方が、しばらくチロを借りたいとおっしゃるんだよ。お宮に米を供《そな》えてくださったのは、この方だ。その気持ちがわしの気に入った。いろいろお話を聞いてみると、チロを借りたいと言われるのも、もっともだ。そして、チロを借りている間、おまえも一緒に来てくれとおっしゃるんだ。チロをやってしまうのではない、貸して上げるんだよ。どうだい、おまえ、一緒に行ってあげますか」
太郎は、おじいさんの顔と女の人の顔とを見くらべて、しばらく考えこみま
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