を、じっとのぞき込みました。
「まあ、かわいい猫……」
女は後を向いて、何か合図をしました。男も馬から下りて来ました。
太郎はそれまで、ぼんやりそのふたりをながめていました。これまで見たこともないような、立派な馬、よその人らしい男と女、その美しいみなり、ことに、洋服を着てる女……。そのふたりが今、じっとチロのほうをのぞきこみましたので、太郎はびっくりして、そこに座ってチロを抱きかかえました。
「ほんとにかわいいこと。まっ白で、そして、金目銀目《きんめぎんめ》で……」
太郎は、なおしっかり、チロを抱きしめました。ふたりの男と女は、何かささやきあって、そして太郎とチロとを見くらべました。しばらくそのままで、誰も黙っていました。馬はのんきに草を食べています……。
やがて、見知らぬ女は、なおのぞきこんできました。
「それ、あなたの猫ですか」
太郎は黙ってうなずきました。
「それでは、ねえ、坊ちゃん、お願いがありますの……。それを、私にくださいませんか。お礼は、どんなにでもしますから……」
太郎はびっくりして、強く頭をふりました。
「私にくださいね。どんな[#「どんな」は底本では「ど
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