を組んで、三人の奇術師のようすをながめました。
「どうも、不思議なやつらだ。とにかく、明日の朝、首きりの役を言いつけるぞ」
 キシさんは平然《へいぜん》と答えました。
「ひきうけましょう。奇術でやってみましょう。五十人の首ぐらい、またたくまに打ち落としてみせますし、お望みなら、その首をまたつなぎあわしてもみましょう」

      チロの国

 その夜、奇術師に化《ば》けてる三人は、城の中のせまい一室に、とめおかれました。
 三人は、ひそひそ相談しあいました。いろいろ危急《ききゅう》なことがかさなっています。そしてまず第一に、玄王《げんおう》のことをさぐりださねばなりません。
 夜遅く、城の中の匪賊《ひぞく》達が寝しずまったころ、太郎とチヨ子は起きあがって部屋から出ていきました。チヨ子は城の中のことをよく知っていますので先に立って進みました。
 奥の方の部屋に行って、大きな声でチヨ子はいいました。
「もしもし、金目銀目《きんめぎんめ》の猫が、どこかへ行ってしまいました。こちらに来ませんでしたか」
「チロ、チロ、チロや……」
と、太郎は呼びました。
 そして二人で、部屋の中を探しました。
「うるさいな。猫なんかいないよ。ほかを探してこい」
 二人は、ほかの部屋に行きました。
「もしもし、金目銀目《きんめぎんめ》のネコが来ませんでしたか」
「チロ、チロ、チロや……」
 寝ていた匪賊《ひぞく》達は目をさましました。
「うるさいな。ネコなんかいないよ」
 そして二人は、あちらこちら探しまわりました。
 奇術師《きじゅつし》の子供達が猫を探しているので、誰も怪《あや》しむものはありませんでした。
 けれどじつは、玄王《げんおう》のことを探偵《たんてい》しているのでした。
 あちらこちらはいりこんで、それから、金銀廟《きんぎんびょう》の方へ行ってみました。
「もしもし、金目銀目の猫が来ませんでしたか」
 小さなランプのついてるきりの、うす暗い中から、二―三人の男が[#「二―三人の男が」は底本では「二|三人の男が」]起きあがりました。
「うるさいな。猫なんかいないよ。病人がいるきりだ」
「いいえ、確かにチロが、こっちへ逃げて来たんです」
 ふたりはどしどし、中にはいっていきました。
 奥の方に祭壇があって、金銀の厨子《ずし》の中に、猫の像が金目銀目を光らしており、いろんな不思議な
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