を指《さ》しました。
「あの山の上へ行こう」
 老人《ろうじん》が杖《つえ》を振《ふ》ると、二人は宙《ちゅう》を飛《と》んで、すぐにその高い山の上にきました。王子はそこの岩《いわ》の上に立って眺《なが》めました。城《しろ》や町はもうひとつの点《てん》ぐらいにしか見えませんでした。土饅頭《どまんじゅう》ぐらいな、なだらかな丘《おか》が起伏《きふく》して、その先《さき》は広い平《たい》らな野となり、緑《みどり》の毛氈《もうせん》をひろげたような中に、森や林が黒《くろ》い点《てん》を落《おと》していて、日の光りに輝《かがや》いてる一筋《ひとすじ》の大河が、帯《おび》のようにうねっていました。
「もうこれきりにしようか」と老人《ろうじん》がいいました。
 王子はまた夢《ゆめ》からさめたような気持《きもち》で、老人《ろうじん》の顔《かお》を眺《なが》めました。それから、うしろの方の一番高い山の頂《いただき》を指《さ》しました。
「あの山の上へ行こう」
 老人《ろうじん》が杖《つえ》を振《ふ》ると、二人はまた宙《ちゅう》を飛《と》んでその山の上へ行きました。
 王子はびっくりしました。その山が一番
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