がら、大空を眺《なが》めてるうちに、いつか、うっとりした気持《きもち》になって、うつらうつら眠《ねむ》りかけました。
 誰《だれ》かが自分を呼《よ》ぶようなので、王子はふと眼《め》を開《ひら》きました。見ると、すぐ前に一人の老人《ろうじん》が立っていました。真黒《まっくろ》な帽子《ぼうし》をかぶり、真黒《まっくろ》な服《ふく》をつけ、真黒《まっくろ》な靴《くつ》をはき、手に曲《まが》りくねった杖《つえ》を持《も》っていました。顔《かお》には真白《まっしろ》な髯《ひげ》が生《は》えて、その間《あいだ》から大きな眼《め》が光っていました。
 王子が眼《め》を覚《さま》したのを見て、老人《ろうじん》はハハハと声高《こわだか》く笑《わら》いました。王子は恐《おそ》れもしないで尋《たず》ねました。
「お前は誰《だれ》だ?」
 老人《ろうじん》はまた笑《わら》っていいました。
「誰《だれ》でもいい。お前をためしにきた者だ。……わしがお前を高いところへつれて行ってやろう。わしと一|緒《しょ》にくるがいい」
「本当《ほんとう》に高い所へつれていってくれるのか、僕《ぼく》が望《のぞ》むだけ高いところへ?
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