んだというので、いろいろいってきかせましたが、王子は平気でした。ある時なんかは、城《しろ》の中に飼《か》ってある象《ぞう》の背中《せなか》に乗《の》って、裏門《うらもん》から町へでて行こうとまでしました。その象《ぞう》がまた、平素《へいそ》はごく荒《あら》っぽいのに、その時ばかりは、王子を背《せ》にのせたまま、おとなしくのそりのそりと歩いているのではありませんか。
国王はひどく心配《しんぱい》しまして、なにか面白《おもしろ》い遊《あそ》びごとをすすめて、王子の気を散《ち》らさせるにかぎると思いました。それで、多くの学者《がくしゃ》たちが集って、いろんな面白《おもしろ》い遊《あそ》びごとを考えだしては王子に勧《すす》めました。すると王子はこう答《こた》えました。
「高いところからまわりを見おろすのが一番|面白《おもしろ》い。世の中にこれほど面白《おもしろ》いことはない」
どうにも仕方《しかた》がありませんでした。それで皆《みな》は相談《そうだん》して、その癖《くせ》が止《や》むまでしばらくの間《あいだ》、王子を広い庭《にわ》に閉《と》じこめることになりました。庭《にわ》には木も石もな
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