はひどく、ダイナマイトを投げ込んだよりも大きな音がして、魚類がみなぷかぷか浮き上るとか。
今朝ほど雷の話をしたことを思い出して、わたしはお姉さまの方に笑いかけたが、はっと息をのんだ。お姉さまの顔に、氷のような冷たいものが感ぜられた。わたしの視線を受けて、お姉さまは冷酷なほど澄んだ声で御言った。
「お母さまも、秋子さんも、ちょっと席を外して下さいませんか。わたし、小野田さんに伺いたいことがありますから。」
なにか逆らい難いものがあった。お母さまもそうお感じなさったに違いない。わたし達は黙って眼の中を見合った。それから小野田さんを見ると、不敵なという感じで、庭の方に眼をやり、唇の隅をかんでいる。
「では、ちょっとの間ね。」
お母さまはなにか慌てていらして、立ち上りなさった。わたしもそれに随った。お姉さまは脇息にがっくりもたれかかって、眼だけできっと睥んでいらした。
お母さまとわたしは茶の間に退いた。へんに体が震えた。大きく息がつけない気持ちだった。お座敷の方は、声も物音もしなかった。
お母さまも黙っていらっしゃるし、わたしも黙っていた。
わたしは時計の針を見ていた。十五分ばかり
前へ
次へ
全26ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング