はひどく、ダイナマイトを投げ込んだよりも大きな音がして、魚類がみなぷかぷか浮き上るとか。
 今朝ほど雷の話をしたことを思い出して、わたしはお姉さまの方に笑いかけたが、はっと息をのんだ。お姉さまの顔に、氷のような冷たいものが感ぜられた。わたしの視線を受けて、お姉さまは冷酷なほど澄んだ声で御言った。
「お母さまも、秋子さんも、ちょっと席を外して下さいませんか。わたし、小野田さんに伺いたいことがありますから。」
 なにか逆らい難いものがあった。お母さまもそうお感じなさったに違いない。わたし達は黙って眼の中を見合った。それから小野田さんを見ると、不敵なという感じで、庭の方に眼をやり、唇の隅をかんでいる。
「では、ちょっとの間ね。」
 お母さまはなにか慌てていらして、立ち上りなさった。わたしもそれに随った。お姉さまは脇息にがっくりもたれかかって、眼だけできっと睥んでいらした。
 お母さまとわたしは茶の間に退いた。へんに体が震えた。大きく息がつけない気持ちだった。お座敷の方は、声も物音もしなかった。
 お母さまも黙っていらっしゃるし、わたしも黙っていた。
 わたしは時計の針を見ていた。十五分ばかり
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