、ターコール僧正《そうじょう》さまのお祈《いの》りで生きあがったこの人形を、さいごに一|度《ど》だけ、みな様にお目にかけることにいたしました……」
それは、いつも人を呼《よ》びあつめるこっけいな道化《どうけ》たあいさつとは、まるっきりちがった調子《ちょうし》でした。見物人《けんぶつにん》たちはへんな気がしました。そして、コスモが人形をそこへもちだしたのを見ますと、ふしぎでした。古いはげかかった人形の顔《かお》が、なるほど、いきいきとしていて、笑《わら》ってるようです……。
その人形の踊《おど》りが、またすばらしいものでした。年とったやせたコスモの手であやつられてるとは、どうしても思えませんでした。眼《め》をみひらき、はれやかに笑《わら》いながら、だんだんはげしく、しまいにはまるで気でもちがったように、踊《おど》りまわりました。日の光に、金色の三|角帽《かくぼう》がきらきらとかがやき、五|色《しき》の着物《きもの》がにじ[#「にじ」に傍点]のようにかがやきました。どう見ても、生きた人形が自分で踊《おど》ってるのでして、コスモはただそれについてまわってるだけでした。マンドリンをひいてる
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