コスマも、人形を踊《おど》らせるためにひいてるのではなく、人形からむりにひかせられてるようでした。
 見物人《けんぶつにん》たちは、人形の踊《おど》りに見とれて、夢《ゆめ》をみてるような気持《きもち》になり、声をたてるものもなくただうっとりとしていました。コスモもコスマもむちゅうでした。もう息《いき》もつけませんでした。そしてとうとう、踊《おど》りのさいちゅうに、コスモは力がつきてぱったり倒《たお》れてしまいました。同時《どうじ》に、コスマのマンドリンも、ぷつりと糸が切れました。
 人形だけが、はれやかに笑《わら》いながら、ひとりで立っていました。

     四

 コスモとコスマとは、人形を大事《だいじ》にかかえて、故郷《こきょう》へ帰《かえ》っていきました。たくさんもらったお金を、半分ばかり、ターコール僧正《そうじょう》へおくりました。
 ターコール僧正《そうじょう》は、お金をたくさんもらっても一|文《もん》も、もらわなかったときと同じように、別《べつ》にふしぎがりもしませんでした。そしてそのお金をみんな、貧乏《びんぼう》な人たちにめぐんでやりました。それから、二人の人形使《にん
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