ていました。
三
ターコール僧正《そうじょう》のお祈《いの》りで生きあがった人形……活人形《いきにんぎょう》……。
そういううわさで、町はわきかえるようなさわぎでした。そしてその活人形《いきにんぎょう》の踊《おど》りを見ようとおもって、町の人はもとより、近在《きんざい》の人まで、美《うつく》しく着《き》かざって、町のにぎやかな広場に集ってきました。
見物人《けんぶつにん》たちが美《うつく》しく着《き》かざってるのにくらべて、人形使《にんぎょうつかい》の方はひどく粗末《そまつ》ななりでした。コスモはなんのかざりもない色のあせた黒《くろ》い服《ふく》をつけ、まんなかにすりきれたふさ[#「ふさ」に傍点]のついてる大黒帽《だいこくぼう》をかぶり、木靴《きぐつ》をはいていました。コスマは、赤茶《あかちゃ》けた服《ふく》をつけて、古いマンドリンをかかえていました。そして広場の中には、うすいむしろがしいてあるきりでした。
けれども、コスモもコスマもいっしょうけんめいでした。その日にやけた年とった顔《かお》には、いつにない若々《わかわか》しい元気がうかんでいました。彼《かれ》は額
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