したよ」とコスモは大きな声でいいました。
コスマはびっくりして飛《と》びあがるようにたってきて、ターコール僧正《そうじょう》を迎《むか》えました。
僧正《そうじょう》はあまりよけいな口をききませんでした。そしてすぐに尋《たず》ねました。
「人形は?」
「はい、これでございます」
コスモとコスマは、室《へや》のすみの釘《くぎ》にさがってる人形のおおいを取りました。赤と黄と緑《みどり》と青と紫《むらさき》との五|色《しき》のしま[#「しま」に傍点]のはいった着物《きもの》をつけ、三|角《かく》の金色の帽子《ぼうし》をかぶり、緋色《ひいろ》の毛靴《けぐつ》をはいて、ぶらりとさがっていました。その帽子《ぼうし》や着物《きもの》や靴《くつ》はもとより、顔《かお》や手先《てさき》まで、うすぐろくよごれていて、長年のあいだ旅《たび》をしてあるいたようすが見えています。
僧正《そうじょう》はそれをじっとながめました。
「お祈《いの》りをしてあげましょう」
僧正《そうじょう》は紫《むらさき》の衣《ころも》をきました。人形の前に香《こう》をたき、ろうそくの火をともしました。そしてじゅず[#「じゅ
前へ
次へ
全11ページ中5ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング