。それも、若い頃はさほど美人でもなかったが、年をとるにつれて美しくなってきた。全く異数の女だ。」
人々は意味ありげに眼を見合せました。
「その上、財産もあるというのだろう。」と一人がいいました。
「うむ、財産もある。」
「君に誂え向きだね。」とまた一人がいいました。
「惜しい哉、彼女は既に一度結婚したことがあるのだ。」と金田は答えました。
「それでは、妾の組だな。」と誰かがいいました。
「目下考慮中というところだ。まず乾杯しよう。」
一同は笑いながら乾杯をしました。
その時、乾杯に加わりながら、景雲はぱっと杯を床に叩きつけて砕きました。金田はじっと彼の方に眼を据えました。彼は即座に、強く自分の腿をつねって、その痛みに顔をしかめました。それが、何かの挑戦となったのでありましょうか、金田の拳が飛んで来て、彼の横面を一撃しました。彼はその痛みをもじっと怺えました。
金田の大きな顔が彼の眼の前に覗きだして、低く底力のある声でいいました。
「お前のような奴がいるから、俺はあのひとを保護してやらなければならないのだ。もうあの家へも出入を止めたがよかろう。」
そしてまた拳の一撃が彼の横面へ
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