婦だけでは手不足のところへ、おれがうまくやって来たというものだ。
 戦地の話を、おれはまた繰り返さねばならなかった。――南方の小さな島で、長い間食糧の補給がとだえ、兵隊たちは飢餓のために発狂する者まで出て来た。空腹どころではなく、全く飢餓だった。どうやら食用になる野草の球根や蔓茎を植えるのに、足だけで体を支えることができず、四つん這いにならねばならなかった。――その真似をして、おれは少し酒もまわっていたので、畳の上を這ってみせた。
 そばで見ていた千代が、声を立ててげらげら笑った。おれは睥みつけてやった。
「笑いごとじゃないよ。」
 千代はなかなか笑いやまなかった。
 おれにとっての深刻な経験も、まるで茶番になってしまった。おれは話をやめて、やけ酒を飲んでやった。
 それだけなら、まだよかったが……。翌日、千代は裏の畑の草取りをした。季節向きのいろんな野菜が作ってあり、店の料理の材料ともなるのである。耕作は赤木が受け持ち、草取りはおもに千代がさせられる。ところがその日、千代は畑の畦の間に、膝頭と肱とで四つん這いになって、着物を泥だらけにしている。前の晩におれが話した通りの姿勢だ。それを
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