いではないかと仰言って下さいませ。そしてこれからもおやさしいお手紙書いて下さいませ。
 ――――
 先生は私にもうどんなにか愛想をおつかしでいられましょう。私のような下らぬ者が、一寸の間でも先生にお手紙差上げることが出来ましたのは、神様が、私の思いつめた心のために、瞬時先生の幻を私に見せて下さいましたのでございましょう。淋しく悲しい気が致します。
 今夜は雨と風の不気味な夜でございます。少しも眠くありませぬ。
 先生、お願いでございます。も一度私にお手紙下さいませ。最後のことのはっきりわかるお手紙、も一度お書き遊ばして下さいませ。
 ――――
 先生、御仕事がおすみになりましたこと、私もたいへんうれしく存じます。どんなにお立派なものがお出来になりましたことでございましょう。先生がお立派なものをお書き下さいますことが、私は、一番うれしゅうございます。私のような者が下らぬお手紙ばかり差上げますこと、どんなにか先生のお気持を乱し御迷惑をおかけ致しておることでございましょう。私の我儘おゆるし下さいませ。
 先生にいつか、私のような者のところへでも、いらして頂けます時がございましょうか。そんなこ
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