りませぬ。頭が痛うございます。胸がくるしゅうございます。
この前、失礼なお手紙書きました。それがお気に障って、もうお手紙下さらないのでございましょうか。私はどうしたらよろしゅうございましょう。この手紙に御返事下さいませ。どのようなお手紙でもかまいませぬ。
私は先生をお想い申上げてはいけないのでございましょうか。悲しみに泣くことさえ滑稽なのでございましょうか。何もかもわかりませぬ。苦しくて切なくてたまりませぬ。この世が糠のように味気のうございます。
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私は世俗の生々しさを、そのまま心と体に受入れる力がございませぬ。きりかかすみのようにはかないもの、なんだか自分がそのようなものの気のされる時がございます。
現世以外の或る無形なものの中に、そっと住んでいたい気が致されます。
恐ろしく淋しく苦しくてたまりませぬ。
[#ここから2字下げ]
ささがにのくものいゆれて絶えむとす
ゆめもうつつも消ゆるべらなり
[#ここで字下げ終わり]
――――
私は、これから御本を少し読みたく思います。けれど、どんな風に読んでよいのか少しもわかりませぬ。素読にするだけで、何にも感じとることが出
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