、打ってごらん。」
 彼女はまだ昨夜の続きを夢みているらしかった。小娘に似てもつかない焼け瀾れた淫蕩な眼付で、私の方へじりじりと迫ってきた。私はぞっと冷水を浴びたような気がした。眼を見張りながら、思い切って彼女の頬辺へ平手打ちを喰わした。そして今にも彼女から掴みかかって来られるものと、その身構えをしたが、彼女は変にくしゃくしゃな渋め顔をして、息をつめてるかと思うまに、ぽろりと大粒の涙を落して、それをきっかけにわっと泣き出してしまった。私は呆気にとられて、訳が分らなくなった。まるで小さな子供のような彼女の泣きじゃくりを、惘然と眺める外はなかったが、次の瞬間には、自分でも変な気持になって、はらはらと涙をこぼした。その後からなお激しく涙が出て来た。
 やがて私は、涙を払って立上った。汚い煎餅布団につっ伏して泣いている、腰帯一つの小娘の姿を、上からじろりと見下して云った。
「もう帰るよ。」
 女は駄々っ児のように首を振った。
 私はその背中に屈み込んで、やさしく肩に手をやりながら、またくり返した。
「もう帰るよ。夜が明けたんだ。」
 それから私は、咋夜の勘定残りの、なけなしの五円札を取出して、
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