ぐ後からやって来たのは、要求とはまるで反対の、身長も身柄も貧弱な小女であった。栄養不良で発育不完全な、いじけきった者のように思われた。
「君は一体いくつになるんだい。」
 四角な薄汚い餉台の前に坐った女へ、私はそう尋ねかけてみた。
「十四よ。」
 黒いしみのある味噌歯を出して薄笑いをしながら、女は尻上りの調子で答えた。
「十四……それにしちゃあよく伸びたものだね。」
「何が?」
「僕はまた十七八くらいかと思った。」
「そう。」
 気乗りのしない返辞をして、彼女は私の方をじろじろと見ていた。私もその顔を見返してやった。下卑た凸額《おでこ》の下に、どんよりした眼が凹んでいたが、口許のあたりに、濡いのある初々しさが漂っていて、だらりと餉台の上に投げ出されてる、手首から指先の肉附など、十四歳と云うのも満更嘘ではなさそうだった。
「十四やそこいらで、どうしてこんな所へ出たんだい。」
「家が困ったからよ。」
「辛くはないかい。」
「そりゃあ辛いわよ、姉さん達が私に苦労かけないようにって、名指しでないお客には、いつも私を先に出してくれるけれど、それが却って私、嫌で嫌で仕様がないわ。いつも疲《くたぶ》
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