証明される。もっとも顕著な事柄は、そしてこの作品をこしらえるおりの私の期待をはるかに越ゆることであるが、ジャン・クリストフはもはやいずれの国においても他国人ではないということである。あらゆる遠隔地方から、あらゆる異民族から、シナから、日本から、インドから、アメリカ諸国から、ヨーロッパのあらゆる民衆から、多くの人々が私のもとへ言いに来た。「ジャン・クリストフは私たちのものだ。彼は私のものだ。彼は私の兄弟だ。彼は私だ……。」
そしてそのことは、私の信念の真実だったことを、私の努力が目的に達したことを、私に証明してくれた。というのは、創作の頭初において、私はこう書いておいた(一八九三年十月)。
「人類の一致、それがいかなる多様な形態のもとに現われようとも、常にそれを示すこと。それこそ、科学のそれと同様に芸術の第一の目標でなければならない。それがジャン[#「ジャン」に傍点]・クリストフ[#「クリストフ」に傍点]の目標である。」
ジャン[#「ジャン」に傍点]・クリストフ[#「クリストフ」に傍点]のために選まれた芸術的形式と文体とについて、多少の考慮を私は披瀝《ひれき》すべきであろう。なぜなら
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