してる広場の市[#「広場の市」に傍点]に、あらゆる犠牲を覚悟しあらゆる汚行をしりぞける勇敢な魂の小団を、対立させることだった。私はそれらの魂を、彼らの主長となるべき一英雄の指呼のままにその周囲に集めたかった。そしてその主長を得るためには、それを創造しなければならなかった。
 私はその主長について二つの肝心な条件を要求した。
 一――自由な明晰《めいせき》な真摯《しんし》な眼、ヴォルテールや百科全書派《アンシクロペジスト》らが、当時の社会の滑稽《こっけい》と罪悪とを素朴《そぼく》な視力によって諷刺《ふうし》させんがために、パリーにやって来さした、あの自然人たち――あの「ヒューロン人」たち――のような眼。私は現今のヨーロッパを見てそして批判せんがために、そういう観測所――率直な両眼を必要とした。
 二――見てそして批判することは、出発点にすぎない。そのつぎは行動である。何を考えようと、なんであろうと、あえてそうするのでなければいけない。――あえて言うべし。あえて行動すべし。十八世紀の「素朴人」をもってしても、嘲笑《ちょうしょう》するには足りる。しかし今日の力戦のためにはそれはあまりに虚弱で
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