なんの役にたつか。虚偽を事とする諸君の魂の根は、虚偽に荒らされた土地の上に、空に浮かんでいるだろう。僕はもはや敵として諸君に語っているのではない。諸君の熱情が口に祖国の名を藉《か》りるとしても、われわれは意見の相違を超越した高い地歩に立っている。祖国よりもさらに偉大なる何かがあるとすれば、それはまさしく人間的良心である。悪きイタリー人たるの苦痛を忍んでも、侵してはならない掟《おきて》が世にはある。諸君の前に立ってる者は、真実を求めてる一個の人間である。諸君はその叫びを聞かなければならない。諸君の前に立ってる者は、諸君が偉大で純潔であるのを見んことを、また諸君とともに働かんことを、熱烈に希望してる一個の人間である。諸君が欲すると否とにかかわらず、われわれは皆、真実をもって働いてるすべての人々と、共同に働いているのである。もしわれわれが真実をもって行動するならば、われわれから生れ出て来るところのものは(何が出て来るかをわれわれは予見することはできないが、)われわれの共通の標《しるし》をつけているだろう。人間の精髄はそういうところにある。真実を求め、真実を見、真実を愛し、真実に身をささぐる、
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