つ》たる実行を伴う明晰《めいせき》な知力の熱情を彼らはもっていた。彼らは場合によっては、国民的生活が個人に課する規律的義務のために、自分一個の理性の嗜好《しこう》を犠牲にすることもできたが、それでもなお、最高の祭壇と真実にたいする至純な熱情とを捨てなかった。強烈な敬虔《けいけん》な心で真実を愛していた。それらの若い人々の首領の一人は、(ジューゼッペ・プレゾリニで、当時ジオヴァニ・パピニとともに声[#「声」に傍点]の一党を指導していたが、)敵から侮辱され中傷され脅かされながら、泰然自若として答え返した。
――真実を尊敬したまえ。僕はあらゆる怨恨《えんこん》を捨て心を打ち開いて、諸君に語っているのだ。諸君から受けた害悪をも、僕が諸君になしたかもしれない害悪をも、忘れているのだ。真実でありたまえ。真実にたいする敬虔|峻厳《しゅんげん》な尊敬のないところには、良心は存しないし、高い生活は存しないし、犠牲の可能性は存しないし、高潔は存しないのだ。真実という困難な義務を修業したまえ。虚偽を事とする者は、相手に打ち勝つ前に、まずおのれ自身を腐敗させる。虚偽によって目前の成功を得たとしても、それが
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