呂律《ろれつ》の回らぬ叫び声をたてていた。その手は毛布を握りしめながら、そこに物を書くような格好をしていた。そして疲れきった彼の頭脳は、それらの和音がどういう成分でできてるかを、またどういう意味を告げてるかを、機械的に詮索《せんさく》しつづけていた。しかしどうしても捜し出すことができなかった。感激のあまりとらえる手先に力がはいらなかった。彼はまたやり始めた……。ああこんどは、あまりに……。
「やめてくれ、やめてくれ、もう俺にはどうにもできない……。」
 彼の意志はまったくゆるんでしまった。静かに彼は眼をふさいだ。幸福の涙が閉じた眼瞼《まぶた》から流れた。そばについてる小娘が、慎《つつ》ましくその涙を拭《ふ》いてくれたが、彼はそれに気づかなかった。彼はこの下界に起こってることをもう何にも感じなかった。管絃楽は沈黙してしまって、眩暈《めまい》を起こさせるほどの諧調《かいちょう》の上に彼を取り残した。その諧調の謎《なぞ》は解けていなかった。彼の頭脳はなお強情に繰り返した。
「いったいこの和音は何物だろう? どうしたらこれから抜け出せるだろうか。どうあっても出口を見出したいものだ、おしまいにな
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