》には、音楽がやはり演奏されながら遠ざかっていった。クリストフは汗まみれになって、そのほうへ両腕を差し出した。
「待ってくれ、俺を待ってくれ!」
彼はその音楽へ追いつこうとして駆け出した。つまずきよろめいた。あらゆるものを押しのけていった……。あまり早く駆けたので、もう息がつけなかった。心臓が高鳴り、血の音が耳に響いていた。隧道《トンネル》の中を走る汽車のようだった……。
「ああ、忌々しい!」
彼は自分を待たずに演奏しつづけてくれるなと、管弦楽団へ必死となって合図をした……。ついに隧道《トンネル》から出た……。沈黙がもどってきた。ふたたび音楽が聞こえてきた。
「いい、実にいい! もっとやれ! 思い切ってやれ!……だがいったいだれの曲なんだ?……なんだって、その音楽はジャン・クリストフ・クラフトのだって? どうしたことだ! 馬鹿を言うな! 俺はあの男を多少知ってる。あの男はそんなものを、少しもかつて書いたはずはない……。まだ咳《せき》をしてるのはだれだ? そんなに音をたてるな! その和音はなんというんだ? そしてこんどのは?……そんなに早く進むな! 待ってくれ!……」
クリストフは
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