分の手でこしらえ上げたその秩序によって感ずる享楽は、実在せるものにたいする直接の直覚をゆがめなければ得られなかった。ただときどきある天才が、大地としばし接触しては、芸術の領域からあふれてる現実の急流に突然気づく。堤防は張り裂ける。自然は割れ目からはいってくる。しかしすぐに穴はふさがれる。人間の理性を保全するためにそれが必要である。人間の理性はもしエホバと眼を見合わしたら滅びてしまうであろう。かくて理性はふたたびおのれの独房をセメントで固め始める。そこへは理性がこしらえたもののほかは何も外部からはいって来ない。そしてそれはおそらく、見ることを欲しない者にとっては美《うる》わしいであろう……。しかし予は、エホバよ、汝の顔を見んことを欲する。たとい撃滅されようとも、汝の雷のごとき声を聞かんことを欲する。芸術の声音では窮屈である。人の精神よ黙れ! 人間に沈黙あれ!……
しかしそういうりっぱな口をきいてから数分たつと、彼は蒲団《ふとん》の上に散らかってる紙を一枚手探りに捜して、それになお多少の譜を書きつけようとした。そして自分の矛盾に気がついたとき、彼は微笑《ほほえ》んで言った。
「おう私の古
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